歌をうたいに行ってきたよ。
風の冷たい夜、
十数曲ばかりの楽譜を大切に抱えて、
落ち葉で散らかった道を
息を白くしながら歩いて
音楽棟まで行ってきたよ。
やっぱり、独りでうたうのはつまらない。
発声練習を兼ねて、
いろいろな歌をうたったけれど、
私のパートはほとんどメゾだから
独りでうたっても気持ちよくない。
”うるわし五月に”
という歌があって
一回も発表したことがない曲だけれど、
もう一回みんなで練習してうたいたいな、と思った。
すごく綺麗な旋律よ。
私が知っているのはソプラノとメゾのラインだけだけど
絶対3部合唱したら綺麗。
”花”や
”もみじ”、その他たくさんの歌をうたっていて
気付いたことは、
自分が一番輝ける瞬間はいつも
歌をうたっているときだということ。
まだ覚えている、
中学の部活でお世話になった先生が色紙に書いてくれた言葉。
「歌に情熱をかけた3年間でしたね」
本当に、その通り。
今でも、歌にかける情熱は冷めてはいないよ。
いつも、一番熱中するのは合唱であって。
生まれてから20年間、
童謡から弦楽まで、
いろいろな音楽のスタイルに出会ってきたけれど
やっぱり自分に一番合っているのは合唱だと思う。
歌をうたっているとき・合唱を聴いているとき
私は他の嫌なこと、何も考えずに済む。
全ての精神が合唱へ向けて集中されて
私は確かに、現実を忘れることができる。
中学の合唱部があんなに楽しかったのは、
きっとそのせいなんじゃないかと思う。
中学時代にはもう二度と戻りたくないけれど、
合唱部には戻りたい。
嫌なこともあったのだろうけれど、思い出として残っていない。
素敵な思い出ばかり、残ってる。
歌を、現実逃避の道具として使いたくはないけれど
またうたいに行きたいな、
また輝いている自分を見にいきたい。
歌のない今の私には、輝きが見うけられないから…。
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